vol.1|なぜ私たちはこの企画を始めたのか
1. なぜこの企画を始めたのか
呉という街は、海とともに生きてきました。
それは観光案内に載っている言葉だけではなく、今を生きる私たち一人ひとりの暮らしや記憶、誇りの根幹に根づいています。その中でも「呉海軍工廠」という存在は、特別な意味を持っています。
戦艦大和を筆頭に、赤城、蒼龍、愛宕、明石といった日本海軍を象徴する艦が建造され、戦争という時代の最前線を支えたこの工廠は、いわば“鉄と人の魂”が込められた巨大な手仕事の現場でした。
しかし、その記憶や価値は、時代とともに風化しつつあります。
かつてのドックは埋め立てられ、クレーンは姿を消し、街の風景も少しずつ変わっていく中で、次第に「呉の工廠」がどれほど世界的に稀有な場所であったのかを知らない人も増えてきました。
私たちは、そんな“失われゆく記憶”にもう一度光を当てたいと思いました。 そしてそれを、決して堅苦しい資料や教科書の形ではなく、「手に取れる形」で、“日常の中で思い出せる存在”として、届けたいと思ったのです。
2. 「記録」ではなく「再会」
このシリーズの名称を【工廠記録】としたのには、明確な想いがあります。それは「忘れていた何かと、もう一度出会ってもらいたい」という願いです。
私たちがこのシリーズを始めた理由は、単なるミリタリーグッズを作りたかったからではありません。艦これやアズールレーンなどの作品を通じて艦船に興味を持ち始めた若い世代、かつて艦を設計・整備していた方々の記憶を語り継ぎたいと願う年配の方々、そして観光でこの街に立ち寄る方々――。
それぞれにとって、呉の艦船は違った意味を持っています。
だからこそ「記録」ではなく「再会」。
誰かにとっては懐かしく、誰かにとっては新しく。
そして誰かにとっては、ふと心に残る“出会い”となるようなコンテンツをつくっていきたいと考えました。
3. “手仕事の記章”に込めた魂
第一弾として選んだのは、「蒼龍」「大和」「赤城」「愛宕」「明石」。いずれも呉工廠で建造され、歴史にその名を刻んだ艦船たちです。
それぞれの艦には、それぞれの物語があります。
飛行甲板に並ぶ艦載機、山上に姿を見せる艦橋、修理のために寄港した艦を癒やす力…。そうした“情景”や“魂”を、ただのイラストではなく、刺繍やデザインとして立ち上げていく。この作業は、いわば「現代の工廠」であり、もう一度“魂を込める”仕事でもありました。
この記章たちは、現代における「艦の名を刻む装備」であり、持ち主がふとその艦に想いを馳せられるような、“小さな再会”を演出する存在です。
4. 呉から、全国へ――
このシリーズの発信地は、もちろん「呉」です。
呉で育まれた食文化、建造された艦船、積み重ねられた記憶。それを、まずはこの土地で再確認し、そして全国に向けて発信していく。それが、私たちの「次なる挑戦」でもあります。
食という形で伝えてきた“艦内文化”を、今度は“記章”という形で伝える。このシリーズは、私たちにとって「店舗を越えた語り部」なのです。
5. この記章を、あなたの“装備”に
このプロジェクトは、私たちだけで完成するものではありません。
むしろこのシリーズが息づいていくのは、皆さま一人ひとりが「自分にとっての一艦」として迎え入れてくださる、その瞬間からだと考えています。
呉という街に想いを寄せる方、艦船にロマンを感じる方、かつてこの地で働いていた誰かの記憶を引き継ぎたいと思う方――それぞれの想いに、それぞれの“再会”があります。
記章ワッペンは、ただのグッズではありません。
それは、時を超えて艦とつながる小さな証であり、持ち主の中にある記憶や情熱をそっと呼び起こす「装備」だと、私たちは信じています。
肩に、バッグに、飾り棚に。
ふと目にしたその瞬間に、少しだけ心が動く。
そんな“歴史との再会”が、皆さまのそばに生まれますように。