工廠記録シリーズとは何か

「工廠記録シリーズ」は、
かつて海軍の中枢として機能した海軍工廠と、
そこで生まれた艦艇・思想・技術を、“記録”というかたちで現代に残すための試みです。

私たちが残したいのは、
艦が生まれた背景、
工廠で積み重ねられた時間、
そしてそこに込められた思想です。


呉海軍工廠とは何だったのか

呉市に置かれた呉海軍工廠は、日本海軍における四大工廠のひとつとして、数多くの艦艇を世に送り出しました。
戦艦、航空母艦、巡洋艦、補助艦――
その中には、のちに日本海軍を象徴する存在となる艦も含まれています。

画像出典:Wikipedia
撮影:U.S. Navy(1941年9月20日)

しかし工廠とは、単なる「工場」ではありません。

設計思想があり、
技術の蓄積があり、
時代ごとの要請と制約がありました。

呉海軍工廠は、その時代における最適解を形にし続けた場所だったのです。


「記録する」という選択

戦後、
多くの施設が解体され、
多くの艦が失われました。

図面は散逸し、
現場の記憶は少しずつ風化していきます。

それでも、
艦の名前は残り、
写真は残り、
語り継がれてきた物語があります。

工廠記録シリーズは、
それらを再び「一つの流れ」として編み直すための試みです。

・ なぜ、この艦はこの形になったのか
・ なぜ、この部隊編成が必要だったのか
・ なぜ、呉でなければならなかったのか

答えは一つではありません。
だからこそ、断定ではなく“記録”として残す。
それが、このシリーズの基本姿勢です。


艦を、単艦で終わらせない

多くの艦艇紹介は、一隻ずつ完結します。
もちろん、それは大切な視点です。
しかし艦は、
必ず部隊の中で運用され、思想の中で役割を与えられていた存在でした。
工廠記録シリーズでは、

・ 艦型という視点
・ 単艦という視点
・ 航戦・部隊という視点

を段階的につなぎ、艦がどのような文脈で存在していたのかを記録していきます。


なぜ、今あらためて「工廠」なのか

現代において、艦艇は博物館の中にあります。
しかし工廠は、街の中にあり続けています。

クレーンの記憶、
港の配置、
地形と産業の名残。

呉という街を歩くと、
工廠の存在は、
今も確かに感じ取ることができます。

工廠記録シリーズは、
工廠が担った役割を、
現代の視点で捉え直し、
次へと伝えるための記録です。

画像出典:Wikipedia
撮影:U.S. Navy(1945年10月)


記録は、やがて装備になる

工廠記録シリーズは、
最終的に「装備」という形にも接続されます。

ワッペン、フラッグキーホルダー、缶バッジ――
それらは単なるグッズではなく、
記録を日常に持ち出すための媒体です。

身に着けることで、
飾ることで、
ふと目に入ったときに思い出す。

それもまた、
一つの「記録の継承」だと考えています。


工廠記録シリーズのこれから

このシリーズでは、今後、

・ 思想と転換点
・ 艦型と役割
・ 単艦の記録
・ 航戦、部隊の記録
・ 逸話と補遺

を段階的に記していきます。

もし、
「もう少し知りたい」と思っていただけたなら、
それが工廠記録シリーズの役割です。


次の記録へ

次回は、
日本海軍が選び取った大きな転換点――
「航空主兵」という思想と、
その象徴となった部隊について記録します。

――その名は、第一航空戦隊。

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一航戦とは何か
――航空主兵という思想が生まれた瞬間